不登校というと、多くの人が「学校に行かず、家でゆっくり休んでいる状態」をイメージするかもしれません。実際、周囲からは「学校に行かなくていいなら、体は休めているよね」「家にいるんだから楽なはずだ」と思われることがよくあります。
しかし、実際に不登校の子どもたちと関わっていると、そのイメージとは大きく異なる現実が見えてきます。学校には行っていない。家で一日を過ごしている。それだけを見れば「休養できている」ように映るかもしれません。けれど、体は家の中にあっても、頭の中はずっと不安でいっぱいということが少なくないのです。
「明日も学校に行けなかったらどうしよう」 「クラスの友達に、今どう思われているんだろう」 「このまま勉強が遅れてしまったら、どうなるんだろう」 「本当にこのままで大丈夫なのだろうか」
こうした思考が頭の中をぐるぐると巡り続け、体は自宅にあっても、心はまったく休まっていない。これが、多くの不登校の子どもたちに共通する「不登校の問題」の一つの側面です。
「目は覚めるけど起きれない」という訴えの背景
不登校のお子さんを持つ保護者から、非常によく聞かれる言葉があります。それが「目は覚めるけど起きれない」というものです。
朝、目はしっかり開いている。意識もある。でも体がまったく動かない。布団から出ようとしても、鉛のように重くて起き上がれない。無理に起きようとすると、めまいや立ちくらみ、頭痛、吐き気などが出ることもあります。こうした状態は、単なる「甘え」や「怠け」ではなく、自律神経の乱れやエネルギー代謝の問題が背景にあるケースが多く見られます。
朝起きられない、午前中は調子が悪いのに夕方以降は元気になる、という日内変動も、不登校の子どもによく見られる特徴です。これは起立性調節障害と呼ばれる状態と重なる部分も多く、思春期の子どもに多く見られることが知られています。ただし、「目は覚めるけど起きれない」という症状の背景には、自律神経だけでなく、栄養状態や血糖値の乱れ、腸内環境、ミネラルやビタミンの不足など、体の内側で起きているさまざまな要因が複雑に絡み合っていることも少なくありません。
家にいる=休めている、ではない
学校を休んでいる状態を見て、周囲は「ゆっくり休めているはず」と考えがちです。しかし、強い不安や緊張が続いていると、体を戦闘態勢に導く交感神経が優位なままになり、本来休息のために働くべき副交感神経がうまく機能しなくなります。
交感神経が優位な状態が続くと、体にはさまざまな不調が現れます。
- 胃腸の動きが悪くなり、食欲が落ちる
- 便秘や下痢を繰り返す
- 眠りが浅く、夜中に何度も目が覚める
- 朝、目は覚めても体が起き上がらない
- 慢性的な疲労感が抜けない
「家で休んでいるのに、なぜか元気にならない」「休養しているはずなのに、どんどん体調が悪くなっていく」——こうした悪循環に陥ってしまうことは、不登校の子どもを持つ家庭で決して珍しいことではありません。これこそが、多くの家庭が直面している不登校の問題の本質だと言えるでしょう。
不登校の解決策として見落とされがちな「栄養」という視点
不登校への対応というと、カウンセリングや学校との連携、環境調整など、心理面や環境面へのアプローチが中心に語られることが多くあります。もちろん、それらはとても大切です。安心できる家庭環境、否定せずに寄り添う声かけ、無理をさせない関わり方は、子どもの心を守るために欠かせません。
しかし、それだけでは説明できないケースも数多く存在します。「気持ちの面では落ち着いてきたはずなのに、朝どうしても起きられない」「安心できる環境を整えたのに、体調不良が続いている」。こうした場合に注目したいのが、分子栄養学という視点です。
分子栄養学とは、体を構成する細胞や神経伝達物質、ホルモンなどが、私たちが日々口にする食事から作られているという考え方に基づき、血液データや症状から体の中で不足している栄養素や、うまく利用できていない栄養素を見極め、食事や栄養素の補給によって体の機能を根本から整えていくアプローチです。不登校の子どもたちの中には、鉄不足、たんぱく質不足、ビタミンB群の不足、血糖値の乱れといった、栄養面での土台が崩れているケースが少なくありません。
例えば、鉄が不足すると脳への酸素供給が滞り、集中力の低下や強い疲労感、朝起きられないといった症状につながることがあります。たんぱく質が不足すると、心の安定に関わるセロトニンなどの神経伝達物質を十分に作ることができず、不安感やイライラが強くなりやすくなります。また、朝食を抜いたり、糖質に偏った食事を続けていたりすると血糖値が乱高下しやすくなり、それが自律神経の乱れや強い眠気、だるさとして現れることもあります。
不登校の解決策は「心」と「体」の両輪から
不登校への向き合い方において大切なのは、「学校を休ませること」そのものをゴールにするのではなく、「心と体が本当に休めているかどうか」を丁寧に見ていくことだと考えています。
- 安心して過ごせる家庭という土台
- 子どもを追い詰めない声かけ
- 質の良い睡眠がとれる生活リズム
- そして、体を内側から支える栄養
この四つがそろって初めて、副交感神経が働きやすい状態に近づき、体も心も本来の回復力を発揮できるようになっていきます。逆に言えば、どれか一つが欠けていると、なかなか良い方向に向かいにくいというケースも多いのです。
学校への不安が一時的にやわらぐ夏休みなどの長期休暇は、こうした生活の土台や栄養状態を見直す、またとないチャンスの時期でもあります。「気持ちの問題」として片づけてしまう前に、一度、体の中で何が起きているのかという視点から、分子栄養学的なアプローチで子どもの様子を見つめ直してみることをおすすめします。心のケアと体のケア、その両方から寄り添うことが、不登校という状態と向き合ううえで、遠回りのようで実は一番の近道になることも少なくありません。




